妖姫新妻(未定)奮闘記 3



「♭〜〜〜♪〜♪ ♪♪〜〜〜〜〜♪」
 自分でもサッパリ解からない歌を口ずさみながらクルクルと第二階層に 登ってゆく私。アマリエさまご公認でクリュウさまとヤれる…もとい、 寝台を共にできると思うと自然と足取りも軽くなります。飛んでおりますが。

 私の手元には白い陶器の壷。大いなるエルゴが私に与えてくださった ミラクルパワー、催淫香があります。うふふふふ…………

 勿論、詳しい使い方はアマリエさまがご教授してくださいました。使用量を 間違えると私の意識も飛ぶそうです。サプレスの護衛獣である私の意識まで ふっ飛ばしてしまうなんて、なんて恐ろしいお香なのでしょう。でも、 ティースプーンに擦り切れ一杯は解かり易い量ですから調子にのって山盛り とかにしない限り大丈夫です。

 ああ、私はついにクリュウさまに無理矢理犯されてしまうのでしょうか。
 明日の朝日が射す頃、寝台の上でグッタリとした私の体は、クリュウさまの> 歯形とガビガビになった粘液でベドベドになっていたりして…(うっとり)
 他のオスどもには触れられるどころか見られるのも御免被りますが、 クリュウさまという麗しい殿方は別です。どうか厭らしい私のカラダの 隅々まで汚しきって奪い去ってくださいませ♪

「き、今日のシュガレットさんは何時も以上にヘンなのです」

 何か変な台詞が聞こえた気もしないでもありませんが、勿論シカトします。

 以前はサクロさまが住んでおられ、現在は私と私のクリュウさまとが同棲♪ しているお家のドアが見えてきました。

 くふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ………お待たせして申し訳御座いません。さぁ今夜は朝までパワフル凸#$凹※ですよ〜〜〜っ♪

 いざっ桃色へ! 

 がちゃっ
「クリュウさまぁ〜〜♪ ただいまもどりましたぁ〜〜〜〜♪」
「あ、おかえりシュガレット」

 私を迎えてくれたのは満面の笑顔のクリュウさま☆ と…………

「ち、もう帰ってきやがった……(ボソ」
 と、私の耳にしっかり聞こえた姉譲りの舌打ちと忌々しげな声で、
「あ、シュガレット。お邪魔させてもらってるわよ」
「あぁ、いらしてたんですか………サナレさま」

言葉通り邪魔しに来やがりましたか。御前試合準決勝で身の程知らずにも クリュウさまと戦ってボロ負けした挙句パリスタパリスに乗っ取られて、 クリュウさまに多大な迷惑をお掛けになった上、助け出してくださった クリュウさまをモノにする為、ショタ女コウレンさまと姉妹で不毛な 奪い合いをなさってる恩知らずのツンデレ特攻隊長、男女サナレさま。

「…………何か言った?」
「いえ、別に〜〜♪」
 私とクリュウさまの愛に満ち満ちた肉欲時間はこうして赤毛ザル(某セカンド に非ず)の淫謀によって遠退いてしまうのでした………… こ〜〜〜んチクショ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(涙)

 台所へとそそくさと移動し、とりあえずはお茶を入れるシュガレット。恋の鞘当てと言うか、皆の想い人たるクリュウの奪い合いにおいてある意味一人勝ちであるシュガレットは敵に塩を送る事くらいはできる。
 途轍もなく大切なミラクルアイテムの白い陶器を取り植えず戸棚に隠し、 嫌味の一つも喰らったらムカっ腹立つのでそこそこの茶葉を選んで、 いつも炉によって沸いているお湯を入れて蒸らす。当然シンテツの護衛獣 の頃から鍛冶の知を学んだシュガレットの事、茶葉の蒸らし加減は 完璧である。アマリエに習っているのでクリュウ好みの味ではあるが、それこそそれで良い訳で、客の好みなんぞ知った事ではない。

 程よく葉が広がり、香りが立ち出すとあたためてあるカップに注ぎ、 お茶請けの焼き菓子(シュガレットの手製)と共に二人に持ってゆく。 某第五ドールも「素晴らしいのだわ」と感心しそうな、お茶会の準備が出来上がった。

「はい、クリュウさま♪」
「ありがとうシュガレット」
「そんな、お礼なんて………(ぽっ)」
 一々コレである。客人より家主へ先に出すのも如何なものかと思われる。 現に客人たる少女サナレも、「ケッ…」と不機嫌に足を組んでいる。尤も、 クリュウの視線が向く直前には足は戻されているのだが……

「ほら、サナレさまもどうぞ」
「なんか言葉に棘あるけど…どうも」
 言葉のアクセント的に言えば「ホレ、飲めや」に近いものがある。 クリュウに対するものと大違いだ。

「それで、サナレさまは何のご用でわざわざここに来やが…いえ、おいでになられたんですか?」
「あら? 大切な『トモダチ』のクリュウに愛に来た(誤字に非ず)って理由じゃいけないわけ?」
 いけません、邪魔なのです。とは流石にクリュウの前では言えない。
「そうですか、クリュウさまもお忙しい身ですので、御用がお有りでしたら手早く終わらせて欲しいものでしたから」
 サナレのセリフに混じっているビミョ〜な言い回しがごっつ気になるのもまた事実。よってシュガレットのセリフも『用を終わらせてとっとと去ねやコラ』という色があったりする。
ピキッと額に青筋を浮かべるサナレ。だが、表情がクリュウに向けている笑顔のままなのは、流石は剣の都一イイ女を目指すサナレと言うべきか。

「うんうん、クリュウも特訓や材料集め、果ては鍛聖の仕事で大変でしょう からね。ストレスも溜まってるんじゃないかって思ってるのよ。常に 『お荷物』抱えて走ってる訳だしね」

 売り言葉に買い言葉。とは良く言ったもので、シュガレットはサナレに 眼に見えない白い手袋を叩きつけられている気がした。というかガチだ。

「あらあら、クリュウさまには私が『常に』くっついてサポートしてさしあげていますから。お気遣いは全く持って無用ですわ♪」
と、明るく返すシュガレット。だがその左手はクリュウに見えない様にサナレへ中指を突き立てていた。
 くぬやろぉ……
 ぎちぎちと殺気にも似た怒気が湧き上がり、サナレの背後にオーラ力が異常放出されそうになる。

 それでも家主たるクリュウは、無言で一振りの剣を見つめていた。

 その剣は所謂長剣で、デザイン的にはコウレンが腰に下げているものに近いが、それでいて全く違っている。まず炎の属性があり、そして軽い。柄の部分もやや細めで、女性用の剣である事がうかがい知れた。
 クリュウはその剣を握ると、椅子から腰を上げて二人からやや距離をとり、振ってみた。

 ヒュッ…

 赤の一閃が軌跡を創り、炎の属性である事を誇示している。

 ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ……

 例に三連繋いでみるも、やはり赤い軌跡は追ってくる。
 その軌跡はやや三角に近い形で眼に残り、今のクリュウが並外れた剣の使い手である事を二人の少女に物語っていた。

「(ホント…強くなっちゃって……)」
「(クリュウさま………)」

 多少の言葉の違いはあれど、意識は同じである。見惚れているのだ、この少年に。

「…うん、さすがサナレ。凄いよ」
 簡単な剣舞を終え、カシ…っと鯉口までしっかり押し込んでから剣を作り主に返す。抱かせて貰った赤子を母に返す様優しく、丁寧に。

「そ、そぉ?」
 そう真っ直ぐに誉められると次の句が出ない。何せ想い人からの誉め言葉なのだ。嬉しくって仕方が無い。
「だって前に見せてもらったサナレの剣を、“自分だけの力”で再現したんでしょ? あれよりかずっと凄いもん」
「そ、そう? ありがとう……」

 一年前、鍛聖を決める試合で振るっていたサナレの剣は、暴走した炎皇パリスタパリスの力を借りて…というか押し付けられて作ったものだった。
 ずっと劣っていたクリュウが自分を置いて遥か高みへ行ってしまう。 努力を続け、いつの間にか自分に並んでいるクリュウに焦りと憤りを 感じていたサナレはその心をパリスタパリスにつけ込まれ、半ば操られて いたのである。だから厳密に言えばあの時のサナレの剣は、サナレのモノではなかった。

 そして今、あの時の大恩人にして、自分ら姉妹の仲すら取り持ってくれた感謝という言葉の塊、クリュウに自分の“成果”を披露しに来たのだ。

 ぎしり…

 ヤな軋み音がどこからか聞こえるがクリュウとサナレは気付いていない。誰かが奥歯を噛み締める音であったりする。

「あの時さ…ボクはサナレの剣の凄さに自分の自信を無くしちゃってたから、ちゃんと感想を言えなかったんだよね。だからサナレを危険な目に合わせちゃったんだ」
「え? どういう事?」

 ポリポリと恥ずかしそうに頬をかくクリュウ。
 その行為そのものがシュガレットに“しっと”のマスクを被らせそうにしてしまう。
「うん…あの剣を見た時にさ、確かに凄いものだって感じたけど、あの剣からはいつものサナレの感じがしなかったんだ。なんていうか…サナレの優しさが感じられなかったんだ」

「ア、アタシのぉっ?!」

 思ってもみなかった言葉にサナレは真っ赤になる。そりゃそうだろう。 道具屋のバーゲンで会った時からツンツンしていて、クリュウには意地悪 していた記憶しかない。だと言うのに、自分を優しい女の子だと見てくれていたというのだから。

 アレから一年もして初めて聞いた事。ある意味、告白に近い。というか彼女にとっては殆ど“それ”だったりする。

「うん、サナレは優しいよ。優しくて、強くて………流石に一番イイ女を目指してるだけあるよ」
と、ニッコリ笑顔付きでそうのたまった。

 ぼしゅううっ!!!

 茹蛸になるサナレ。
 口には全く出していないが、サナレにとってクリュウは邪龍から自らを救い出してくれた王子様といってもよい存在だ。確かにパリスタパリスは龍の姿の精霊であったし、自分は攫われて取り込まれていたのだ。

 ワイスタァンが護り神とまで呼んでいたが、怨みに憑かれた大精霊から剣を片手に救い出してくれたクリュウを、そう思うなと言う方が無茶である。
 サナレとて女の子、そんなロマンティック回路だってちゃんとある。 実際この街でサナレが男として相対しているのはクリュウだけだった。 他の野郎共はアウトオブ眼中で、告白されても自覚が無いのだ。例外的に 大切な親友である帝王ヴァリラがいるが、彼あくまでもライバルであって 恋愛対象ではない。クリュウは間違いなくサナレの尊敬するの男性であり、 意中の相手であった。

 フォオオオオオオオオオオオ………

 そんなストロベリィな空気の横で、水の妖姫の少女が額に“しっと”と書かれているマスクを被らんとしていた。しっとマスクレディの誕生も近いか。
 だがそれより前に、
「あ、あのっ じゃ、確かに伝えたから!そ、そ、そそ、それと、そ、その……剣の事…ありがとうね………じ、じゃあ、またっ!!!!」
「え? あ、あの……」
 捲くし立てるだけ捲くし立ててサナレは顔を赤熱化させたまま部屋を飛び出して行った。クリュウが何かを言う前に玄関のドアを蹴破って、艀の方を使わず一気にウクーターに乗り、水上を走り去って行ってしまった。
「え、ええ〜〜と…一体何なの……?」
「さぁ、何なんでしょうね〜〜」
 後に残ったのは、相変わらず朴念仁で訳の解かっていないクリュウと、理解してはいるが言うつもりが全く無い、しっとのマスクを懐に仕舞い込んだシュガレットだけであった。


To be continued.




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