エロ魔剣シリーズ4 ソノラ×スカーレル



水平線のずっと向こうに真っ赤な夕日が沈もうとしていた頃。
スカーレルは船尾甲板で海を見つめ、髪を風になびかせていた。
頬杖をついて、最近回数が増えたため息をつく。
「眩しいわねぇ…」
遥か遠くの太陽が消えていくとき、その日差しは強くなる。
死の間際に足掻くようなそれは、海に反射して血のようでもあり、彼にとってはアティの髪を思い出させるものでもあった。
呟いて沈黙を味わった後、スカーレルは日差しの向こうを睨む視線をずらして、たずねてきた知人を迎える。
「…なーに。用かしら、ヤード」
気づかれたヤードといえば、ぼんやりと口を開けてこちらを見ている。
相手に気づかれたことに、少し驚いたようだ。
やがて、状況を把握したかのようにいつもの調子に戻って、スカーレルに笑いかけた。
「今、暇ですか?よければ、お茶でもと思って」
「お酒がいいわ」
間髪を入れずに言葉を返すスカーレルの声はやけに低い。
「なら、酒でも。」
機嫌の悪そうな彼の声にヤードは多少驚いたが、話に乗る気はあるらしい彼の返答に満足し、目を細めた。
もっとも…お茶、とは言ったものの、ヤードが茶の相手にスカーレルを指名するときは、必ずと言っていいほど他の意味も含まれる。
昔から知っているからお互い、嘘をつくときや怒っているときはすぐに分かるし、相手の考えていることもなんとなくなら察しがつく。
「じゃあ…私の部屋でゆっくり飲みましょう。ここでは体が冷えるでしょう」
少し相手に距離を置くような笑い顔をしたまま、ヤードは自分の髪に手をやる。
かきあげるような動作をしたままの手でスカーレルを「さあ」、と促した。
スカーレルは普段と変わらぬスマートな歩みで数歩行き、その場で動かないヤードとすれ違った。
「きれいな朱色ですね」
「……」
すれ違った瞬間、立ち止まったまま笑みを浮かべたまま言うヤード。
それをスカーレルは睨んでみせた。
しかしヤードは決して笑みを消さず、朱色に照らされた水面を見つめる。
この男には、この罪のような赤が、ただの朱に見えるようだ。
誰かを責めるわけでも、復讐を誓うわけでもないのだろう。
きっと他意はない。
その様子がひどく気に障って、スカーレルはわざと足音をたてて船室に戻っていった。


「明るいうちからする話じゃないんですけど…スカーレルには話しておきたいと思いまして」
早めの晩酌でグラスを傾けながら、ヤードは言った。
ウィスキーの中で泳ぐ氷は不安定に、グラスのふちに体をぶつけている。
「ふーん。何でもいいけど…アタシに話すのは、アタシなら解決策を知っていると思ったから? それとも、一人で秘密を抱え込んでるのが辛かったかしら」
一方、長い足を組んだスカーレルは冷たい目で床を見ていた。
組み上げられたほうの足先は宙で揺れている。
不機嫌な猫のような仕草に、流石に苛立ちを覚えたヤードは軽く咳払いをして彼を無視する。
「……。これ、読んでみてください。碧の賢帝と紅の暴君についての資料です」
そう言って、ヤードは数枚組の上質紙をスカーレルに渡した。
「碧の賢帝と紅の暴君には、普段私達が目にしている「強さ」以外の側面をもっているんです。剣の自我は、それぞれの持ち主を淫らにさせてしまう効果がありまして…」
「!!」
「碧の賢帝は、文献によると…持ち主の心を淫らにさせることはありませんが、その体を…欲望を満たすだけの道具として、淫らにさせてしまうんです。また、他人に対する影響も強く、剣の自我は覚醒中に性行為をしたものにも働きかけます。」
「そんな…」
「スカーレル…。最近アティさんに変わった様子はありませんか?」
急に弱弱しい声をあげたスカーレルに、ヤードは不安そうな面持ちで聞く。
「あるもなにも、あのコは毎晩…」
「…そうでしたか。誰も彼女とそういう関係になってなければいいのですが…」
先ほどまでの苛立ちなどさめて、スカーレルは目を伏せた。
そして祈るように言ったヤードの言葉に、小さく首を振る。
しかしヤードはスカーレルの行動に気づかないようで、話を続けている。
「具体的な解決法は見つかっていません。文献に載っていたのは男性の例でしたので、アティさんの場合はどうなるか分かりませんが…」
スカーレルはヤードの言葉など飛んでしまったようで、その頭の中はソノラの事でいっぱいだった。
(あのコ…碧の賢帝の影響を…。ごめんね…)


数時間後。月が東の水平線から顔を出していた。
夕飯を食べ終え、海賊達は各々自分の部屋やら、外やら自由に過ごしだした。
カイルは海岸へ散歩。ヤードは自室で読書。
ソノラとアリーゼの姿がどこにも見当たらなくて、スカーレルは船内をうろついていた。
部屋は電気がついていなくて、船尾甲板かと思えばそこにもいない。
まさかアティについていってしまったのではないかとも思ったが、アティもまだ船内にいるのでその線も消えた。
「まったく…どこ行っちゃったのかしら」
ひとりごちて、彼自身もふらり、ヤッファの庵まで出かけてしまった。

気づけば、そこからまた時間は経っていた。いつのまにか月も高い。
ヤッファの庵で、今日は何故かマルルゥも一緒に呑んで。
ほろ酔い加減で海賊船に戻ってくると、ソノラの部屋に灯りがついている。
「なーんだ。帰ってきてたのね」

「ソノラー。居る?」
彼女の部屋の前で、軽くドアをノックして、ソノラからの返事をまつ。
「……」
しかし、幾ら待てども彼女からの返事はない。
「…ソノラぁ?」
部屋の向こうでなにか言っているような気もするが、よく聞こえない。
ドアを隔てて濁る声をよく聞こうと、スカーレルはドアに耳を押し当てた。
こんなこと、酔っているときでもないと馬鹿馬鹿しくてしない。
ばかげたことだと自分でもわかってはいたが、しっかりと耳を済ました。
だけどまだよく分からない。さらに押し当てる耳に力をこめた。すると。
完全に閉じられていなかったドアは大人の男の体重がかけられて、簡単に開いてしまった。
少しよろけながら、スカーレルがソノラの部屋に踏み込んでしまう。
「わっ…」
下に向けたスカーレルの視線が、床に座り込んでいたソノラのそれと合った。
ソノラの目は眠たげにとろんとしている。
なんとなく目が離せなくて、数秒は彼女の目だけをみつめていた。
落ち着くと、次にそのまわりに目をやる。
肩から下を見てみれば、彼女は惜しげもなく白い肌をさらしていて、細い右手は大きく開かれた足の間に当てられている。
「ソノ、ラ…?」
一瞬にして酔いがさめた。彼女は紛れもなく、自らを慰めていたのだ。
足の間の秘所からはじゅくじゅくの蜜があふれ、顔は紅潮している。
「アンタ何してるのっ…こんなっ……」
碧の賢帝の影響を見せつけられたようだった。
剣に出会うまでは、彼女を助けに行かせるまでは、こんな娘ではなかったのに。
スカーレルはショックで、ソノラの体に飛びついていた。
無理やりはがすように、ソノラの手を秘所から離す。
そして彼女の濡れた手をぎゅっと握り締めた。
「!」
一瞬、ソノラの目が見開かれたような気がした。
しかしすぐに、とろんとした調子にもどる。
「ごめん、ソノラ…ごめん……。服、着よ。ほら」
部屋の端に寄せてあるベッドの上に、不自然な盛り上がりがあった。
その中から白いニットがはみ出ている。
スカーレルがそれを掴もうと、片手を離し、身をのりだした。
今の状況の元凶となった、彼の耳がソノラの口元にあたる。
熱を帯びた息が耳にかかって、スカーレルの動きがとまる。
息に彼が反応したことに、少しソノラが笑った気がした。
「ね…スカーレル」
媚びた声でスカーレルの名を呼ぶソノラ。
口をすぼめて彼の耳に息を吹きかける。
そのまま開いた手を首筋に這わせ、スカーレルの顔を引き寄せる。
自らも顔を彼の前に滑り込ませて、湿った唇を彼のそれに押し当てた。
スカーレルの薄い唇が、抵抗するようにきつくむすばれる。
ソノラはそれをほぐすように、柔らかい唇で甘く噛んでいく。
愛撫のようなキスにスカーレルが隙をみせた瞬間、ソノラが半ば無理やり、自らの舌をねじ込んだ。
「ん…んぅ…」
乱暴に、ソノラの熱い舌がからめられてくる。
こちらの意思などおかまいなしに散々口の中を犯した後、やっとソノラは唇をはなした。


つづく

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